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1026年 ファレーズ・フルベール邸
ノルマンディー公国・ファレーズ城では、キリスト降誕祭の宴(うたげ)が催(もよう)されていた。
ロベール伯が主催した今年の晩餐会(パーティー)は貴族・家臣のみならず、農業改革を担当する役人や鍛冶屋(かじや)、各集落の村長なども招(まね)かれ、いつもとは違った雰囲気で盛大に行われていた。
その場には、頼純は無論の事、ロレンツォの隊商(キャラバンヌ)全員も招待されていた。ただ、家臣になりたての『カラス団(コルブー)』達は、残念ながら今回は参加させてもらえなかった。
食事も終わると、その場の一同は呑(の)めや歌えとさらに大きく盛り上がったが、キリスト教徒ではない頼純とサミーラにとっては、少々居心地の悪いものであった。そこで二人はコッソリと外へ抜け出したのだった。
二人は夜の街へと散策(さんさく)にでた。
頼純はロベールから、膝丈(ひざたけ)まである毛皮のクローク(マント、または袖のない外套)をプレゼントされていた。熊の毛皮と思われるそれを直垂(ひたたれ)の上から羽織(はお)ると、見た目は少々山賊めいた雰囲気(ふんいき)になるが、それはそれは温かかった。毛皮に頬(ほお)ずりしたくなるほど嬉(うれ)しいプレゼントである。
サミーラもエルレヴァから、真っ白な毛皮のケープをもらっていた。それがウサギなのか、狐なのか、はたまたヤマイタチ(オコジョ)なのかは聞かなかったが、大金持ちのお嬢さんからのプレゼントである。ミンクである可能性も大きかった。
とにもかくにも、毛皮さえ着ていれば、冬の夜だって寒くはない。
さらに、頼純の手にはリンゴ酒の入った木のタンブラーもあった。
「あ‥ あのォ‥ 」
歩き始めてずいぶんたった頃に、サミーラがやっと言葉を掛けてきた。それまで、二人はほぼ無言だったのである。
話したい事は山ほどあるのに、なんだか恥ずかしくて声が掛けられない。手を握る事さえできない二人は、子供のような恋をしていた。
「こないだの事、お聞きしてもよろしいでしょうか? 」
「も‥ もちろん! なに‥? 」
「ホラ‥ ヨリ様はゴルティエくんのお父さんに―――『同業者組合(ギィールダ)』の情報網が、いつの日かゴルティエくんやロベール様‥ さらにはこの街を救うとおっしゃってたじゃないですか―――あれって、占いですか‥? 」
「え!? 俺、そんなコト言ったっけ? 」
「はい‥ さらに―――お前が、娘や息子の権力を自分の商売に利用しようとすれば‥ その時はこの街がなくなり、お前もすべての財産を失うだろう―――とか‥ お前が、娘や息子のために精一杯手助けをすれば、お前は今よりもはるかに得がたいモノを手に入れるはずだ―――ともおっしゃってました 」
「ああ‥ 言ったねェ‥ 確かにそんなコトを言った! 」
「あの謎めいたお言葉は何だったんです? やはり、占いなのでしょうか?」
「そうそう‥ 俺は占いもできるんだよ、知らなかった? 手相、八卦(はっけ)、姓名判断―――あと、水晶玉も覗(のぞ)けますよ。 よろしかったら、サミーラ殿も占ってしんぜようか? 」
頼純は占い師のような大仰(おおぎょう)な口ぶりで返した。好きな女性とはなかなか話せない頼純でも、きっかけさえあればかなりしゃべる事ができるのだ。おどけてみせる事だってできた。ただ、そのジョークはたいていの場合、痛々しいほどに滑(すべ)っていた。
それでも、サミーラのような女性はクスクスと笑ってくれるのだ。
「もう‥ 冗談ばっかり! そういう言い方をするって事は、ヨリ様は占いがまったくできないし‥ 全然、信じていませんね!? 」
「さすが、サミーラ殿‥ 俺の事をよくご存じだ 」
「だったら‥ あの予言のようなお言葉は何だったんですか? 」
頼純はちょっと考え込んだ。
「あれねェ‥ あれは、まあ‥ 亡国(ぼうこく)の教えというか―――歴史の中で何度も繰り返された真実であり、そこから導き出された教訓ってヤツかなァ‥! 」
「へ~~~え‥ 歴史ですか‥? 」
頼純は口を滑(なめ)らかにするためか、手のタンブラーを呷(あお)った。
「今から、千年ほど昔の中国に‥ その頃よりも、さらに二千年も前までさかのぼって、その歴史をまとめた役人がいたんだ―――司馬遷(しばせん)てェ人でね‥ 彼が書いた本を『史記(しき)』という 」
「つ‥ つまり、今より三千年も前の時代ですか? 」
「うん‥ そうだね! まあ、本の中心は後半の約千年間なんだろうけど‥‥ そこには、人間の欲や意地汚さ、権謀術数(けんぼうじゅっすう)や復讐譚(ふくしゅうたん)など、様々な人々の様々な生き方が詳細(しょうさい)に描かれている。 その中には、清廉(せいれん)な志(こころざし)をもって建国された国や王家が、いつしか腐敗にまみれ、反乱が起き、他国に滅ぼされていく例もたくさん記録されている‥ 」
「は‥ はい‥ 」
「では、なぜそのような腐敗や反乱が起きてしまうのか? それは、王自身が愚かな場合もあるけど‥‥ たいていは、王の親戚(しんせき)や家臣達が、自分の私腹を肥(こ)やすために、王の権力を利用するところから始まっている! 」
「‥‥‥ 」
「上の者が汚職で私腹(しふく)を肥やせば、それを見た下の者達も必ず自分の利に走る。 やがてそれは、末端の小者にまで伝染していくんだ。 人間は弱い。 賄賂(わいろ)など一切うけとらず、清く正しく生きていける者は本当に少ないんだ。 だが、これが繰り返されるとやがて国は乱れ、滅亡への道をたどる! 」
「はい‥ 」
「―――なァんて事を思い出して‥ あのオヤジにカッコつけたセリフを言ったんだろうな。 ホラッ‥ あのフルベールってオッサン、悪党面(あくとうづら)してるじゃん 」
「フフフ‥ そうですね。 でも、ヨリ様って、何でもご存じなんですね 」
「へへ‥ まあね! あの国じゃずいぶんと勉強したからねェ‥ 」
頼純はちょっと自慢げにそう語った。だが彼は、『恋』については何もご存じないし、勉強もまったくしていなかった。
「あ、そうそう‥ 『同業者組合(ギィルダ)』の情報網については――― 孫子(そんし)って人が書いた兵法書に、その重要さが謳(うた)ってあってね‥ 『彼(か)を知り、己(おのれ)を知れば、百戦して‥‥‥ 」
満天の星空の下、ロマンティックな夜のデートで、好きな女性に延々と兵法論を語る―――間抜けな頼純であった。
× × × × ×
クリスマスも終わり、ファレーズも新しい年を迎えようとしていた。だが、ロベール伯の『探索方(たんさくがた)』となった『カラス団(コルブー)』達は、革なめし工場であるフルベール邸に招集されていた。
工場の裏手には、薬剤を水洗いしたあとの皮を干す物干し場があった。いっぺんに何十枚もの皮を日陰干しするため、そこはかなりの広さがあった。
頼純は、12人の彼らを横一列に並ばせた。
ゴルティエ達は、ピンと背筋を伸ばし、足を肩幅に開いて立っていた。両手は拳を作って両脇につけられている。
ダラダラとした生活を送ってきた12人のチンピラ達に、この姿勢を教え込むだけで丸3日も掛かっていた。
「リュカ、ニコラ‥ 一歩前に出ろ 」
頼純の声に、リュカとニコラが緊張した面持ちで列から一歩踏み出した。
「この4日間で、お前ら全員が‥ 親や兄弟、友達に、自分がお城勤めする事を自慢している。 その中で、その仕事が『探索方』である事を話した者が‥ ゴルティエ、プチ・レイ、ドニ、ブノア、リュカ、ジル、ルネ、ニコラの八人だ。 さらに、リュカとニコラの二人は、『ロベール伯爵が何者かに命を狙われている』という事までしゃべっていた。 間違いネーな? 」
頼純は一同の顔を眺めながら、スラスラと調査内容を話した。
その正確な情報に『カラス団(コルブー)』達は一瞬息を呑(の)み、隣同士チラリと目配せをした。
「ど‥ どうしてそれを―――? 」
「我々を調べてたんですか? 」
隊長であるゴルティエと、副隊長となったグラン・レイが次々に尋(たず)ねた。
その問いに頼純が頷(うなず)く。
「ああ‥ 警備隊の仲間に手伝ってもらった。 お前ら全員をずっと尾行してたんだ! 」
その事にまったく気づかなかった『カラス団(コルブー)』達はふたたび静まり返った。
そんな彼らを見回しながら、頼純はさらに言葉を続けた。
「俺はこれらの事をあえてお前達に口止めしなかった。 お前達が、この情報をどうするか確認するためだ。 これらの情報の中で、『ロベール伯に雇われた』、『城の仕事をする』という事を話した者はまあいいとしよう。 さらに『それが探索方の仕事である』としゃべった者までは許してやる。 しかし、『ロベール伯爵が命を狙われている』という事を漏らした者は大いに問題があるぞ! 」
頼純は厳しい目で、リュカとニコラを睨(にら)んだ。
「お前達二人は、その事を他人に話すとどうなるか考えたか? この『探索方(たんさくがた)』が、その殺人者を捜し出すために結成されたと噂になれば、犯人はきっとさらなる用心をするだろう。 そうなれば、我々は犯人をより捕まえにくくなるんだぞ 」
「す‥ すみません‥ 」
二人は正面を真っ直ぐに向いたまま、謝った。だが、リュカがしまったという顔をしているのに対し、最年少のニコラは曇(くも)った表情をしていた。
頼純が重々しい声を掛けた。
「本来ならば、二人には辞めてもらうところだが‥ 今回だけは大目に見てやろう 」
「あ‥ ありがとうございます 」
頼純はゴルティエとグラン・レイに目をやった。
「ただし、罰は受けてもらう‥! リュカ、お前はゴルティエの前に‥ ニコラ、お前はグラン・レイの前に立つんだ‥! 」
一同はこれから何が起こるのだろうと、不安げな表情で成り行きを窺(うかが)っていた。
リュカ達がゴルティエ達の前に、向かい合って立つと、頼純が命じた。
「リュカとニコラ‥ 目の前にいる二人を殴れ! 」
「え!? 」
リュカとニコラのみならず、その場の全員が驚いた。
「ゴ‥ ゴルティエ兄貴が殴るんじゃなくて――― 」
「反対に、殴られるの? 」
だが頼純は、冷徹(れいてつ)な面持(おもも)ちでそれに応えた。
「下の者が犯した罪は、上の者の責任だ。 隊長達に責任を取ってもらう!」
リュカは冷たい風が吹き抜ける中、顔に冷や汗をかいていた。
「い‥ いや、それは‥‥ 」
頼純が大声で怒鳴る。
「さっさと殴るんだ! 」
リュカはゴルティエの顎(あご)を、ニコラはグラン・レイの胸を殴った。むろん、彼らに本気で殴る事などできない。
だが、そんな二人に頼純の叱責(しっせき)が飛ぶ。
「それは撫(な)でてるのか? もう一回、殴り直せ! 」
リュカとニコラは、何度も小さく首を振った。
「無理ですって! 」
「勘弁してくださいよ‥ 」
頼純は険しい表情で二人を睨(にら)んだ。
「はあ‥!? お前ら、この俺の言う事が聞けねェってーのか? 」
その剣幕(けんまく)に脅(おび)えるリュカ。ニコラはふて腐れている。
「い‥ いや‥ 」
リュカ達をクビにするわけにはいかないと思ったゴルティエとグラン・レイが二人に発破(はっぱ)をかける。
「ヨッシャ、こい! 遠慮すんな! 」
「力一杯、殴ってこいや! 」
どうしようかとためらっていたリュカ達だったが、ゴルティエらの声に促(うなが)されて、さらに力を込めて殴った。
「ゴメンなさい! 」
「ガッ! 」
「すみません! 」
「クグッ! 」
強めの拳を再び顎(あご)に喰らったゴルティエは、おもわず右足が一歩後ろに下がった。体の大きなグラン・レイも鳩尾(みぞおち)に拳が入ったらしく、顔を真っ赤にしている。
頼純はそれでも納得しない。
「やり直し! もっと力を入れて! 」
だが、ゴルティエもグラン・レイも、けっしてそれに文句を言わなかった。
リュカとニコラは渾身(こんしん)の力で殴りつける。
「クソッ! 」
「グア! 」
「これで最後です! 」
「ゴッ! 」
今度は右頬(みぎほお)を殴られたゴルティエは数歩、蹈鞴(たたら)を踏み、左頬(ひだりほお)にクリーンヒットを決められたグラン・レイも頭部が大きく揺れた。
なおも頼純の叱責(しっせき)が飛ぶ。
「ダメだ! ありったけの力で殴れ! 」
リュカはもはやヤケクソになって拳を叩き付ける。ニコラも頼純に対する悔しさをグラン・レイにぶつけた。
「ドゥア! 」
「カカカカ‥ 」
ついにゴルティエは後方に吹っ飛び、グラン・レイもその場に崩れ落ちた。
頼純はゴルティエ達の様子を冷静に観察していた。
―――二人とも意識はハッキリしている。打撲(だぼく)もそう大したものではない。だが、これ以上殴られると、彼らもダメージを明日まで持ち越してしまう。 ここらが潮時だろう―――などと考えていた。
その時、リュカが地面にへたり込み泣き叫んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい。 もう無理です‥ もうできません! 兄貴達を殴らせるのは勘弁してください。 失敗した俺達を殴ってください。 お願いします、お願いします! 」
そんなリュカを頼純は厳しい目で見下ろした。
「これは、自分が殴られるよりもつらい罰だ。 これからお前達がヘマをするたびに、彼らは殴られる事になる。 それがイヤだったら、失敗をするな!」
「わ‥ わかりました! もう二度と情報は漏らしません。 絶対に下手(ヘタ)は打ちませんから、許してください 」
リュカは泣きながら、必死に頼み込んだ。
その一方、ニコラは怒った顔で頼純を睨(にら)みつけている。納得していないのだ。
頼純は尖(とが)った目でニコラを振り返った。
「ニコラ‥ お前はどうなんだ? 反省していネーのか? 何か言いたい事があるなら言ってみろ 」
「俺はこのような厳罰(げんばつ)を受けるような事をしたとは思いません。 って言うか、この情報漏洩(ろうえい)の責任は俺達ではなく、ヨリ様にあるって思っています! 」
そのとんでもない発言に一同はびっくりした。
「バ‥ バカ、やめろ! 」
「謝れ、勇者様に謝るんだ! 」
だが、頼純はニコラにさらに尋(たず)ねた。
「お前はどうしてそう思うんだ? 」
「だって、ヨリ様はあの時、俺達に口止めをなさらなかったじゃないですか。 知り合って日が浅く、お互いどこまで信用してよいものか判らない俺達にです。 ましてや、俺達は不良なんですよ! そんな得体の知れない者に、広まってはいけない情報を与えたのなら、それはヨリ様の責任ではないでしょうか! 」
『カラス団(コルブー)』達は絶望的な表情になった。
「あ~~~あ‥ 言うてもうたァ‥! 」
「ヨリ様に口答えなんかしたら、よけいに怒られるだけじゃないか‥ 」
「これまで我慢した、ゴルティエ兄貴達はナンだったんだよ? 」
だが、逆に頼純は怒らなかった。むしろ、丁寧(ていねい)にニコラに説明を始めたのだ。
「なるほど‥ そうだな。 お前の話はもっともだ。 じゃあ、俺に責任があったとしようじゃネーか 」
頼純は一同をゆっくりと見回した。
「けど、たとえお前が悪くなかったとしても‥ その秘密を他人に漏らしたせいで、この仲間の内の誰かが殺されたとしたら‥ それは、お前には関係ねェ事なのか? 大切な仲間が死んで、それでも平気か? 」
「そ‥ そんな事は‥ 」
「だろう!? そういう事なんだよ‥ 責任の問題じゃネーんだ。 わずかな気の緩(ゆる)みは失敗に結びつく。 その失敗は、誰かの死を招(まね)く。 さらにその死は、仲間全員の破滅に結びつくかもしれねェ。 だからこそ、『探索方(たんさくがた)』は慎重にならなければならネーんだ 」
プチ・レイがぼそりと呟(つぶや)いた。
「け‥ けど‥ 俺達だって、そんなに深く考えてたワケじゃなくて―――」
「んなコタァ判ってるよ。 他の奴らだって、たまたまそれを言う機会がなかっただけだ。 いろんな事を考慮して、『殺人者』の事を話さなかったワケじゃねェ。 ただ、この処罰を通して、みんなにも判って欲しかったんだ―――『沈黙』の重要さを! 」
一同は緊張した面持(おもも)ちで、頼純を見詰めていた。
「『探索方』で一番必要とされる才能は‥ 知っている事でも知らねェフリをする。 知らねェ事でも知っているフリをする。 そして‥ 仕事上で知り得た事はいっさいしゃべらねェ―――てェ事だ 」
「‥‥‥ 」
「ただし、今回の調査ではもう一つの反応も調べていた。 上司の理不尽(りふじん)な命令に、お前らがどのように納得するか、どう不満を持つか、そしてどう反論するかである。 そういう意味では、本日のニコラの意見は、最年少であるにもかかわらず、理論的であったし、みんなの前でよくそれを口にできたと思う 」
『カラス団(コルブー)』達はその言葉に再び驚いた。
「え!? 俺達、二重に試されてたの‥? 」
「で‥ ニコラは褒(ほ)められた‥? 」
とはいえ、理不尽(りふじん)さに一番堪(た)えたのは、何の罪もないのに殴られ続けたゴルティエとグラン・レイなのだが、誰もそこには突っ込まなかった。
頼純はさらに続けた。
「ニコラのように‥ 仲間内では、自分が思った事をハッキリ言う事も重要だろう。 偉い人が言ってるから、それは無条件に正しいんじゃなくて‥ 自分が判らねェ事、自分が納得できねェ事は口に出して尋(たず)ねよう。 『俺みてーな馬鹿野郎が思いつく疑問点なんて、みんなに聞いてもらっても、無視されるだけだ。 恥ずかしいから、言うのはやめよう』―――って考える事もあるだろうが‥ そのくだらねェと思われた意見が実は物事の本質をとらえていて、それによって作戦が根本から変わる場合だってある。 そして上の者は、一見愚かにさえ聞こえるそういった意見にも、きちんと耳を傾ける度量が必要となる。 コイツよりも自分達の方が賢いんだから‥ 偉いんだから‥ 自分の正しいやり方を一方的に押しつけてもいい―――という考え方ではダメだ」
「う~~~ん‥ 難しいなァ‥‥‼ 」
頼純はいつものように一人一人の目を見ながら語り掛けた。
「ただし‥ いったん全員で決めた事、上から命令された作戦は、それぞれがそれを完璧に遂行しなければならねェ。 そして、知り得た情報は絶対に外部に漏らすな―――これができねェ野郎は辞(や)めてもらう。 それだけは覚悟しておいてくれ! 判ったな! 」
ニコラを始め、『カラス団(コルブー)』全員が大きな声で返事をした。
「は‥ はい(ウィ ムシュー)‼ 」