音楽・SEQUENTIAについて


 PCでこのホームページをご覧の方なら、バックに素晴らしい曲が流れている事をご存じだと思います(スマホ等では、一番下の再生ボタンを押すとお聞きになれます)。
 これは、中世音楽のスペシャリスト『セクエンツィア SEQUENTIA』というアンサンブルグループによる『聖なる乙女マリアよ/キリストと聖なるマリアが/神より愛されし聖ニコラは』という曲です。

 日本では1989年に発売されたアルバム『中世イギリスの歌 English Songs of the Middle Ages』に収録された曲です。
 このアルバムの解説(ライナーノーツ)では、

 ―――初めに収められた3つの作品、(聖なる乙女マリアよ)、(キリストと聖なるマリアが)、(神より愛されし聖ニコラは)は、イギリスの隠者、聖人として知られる聖ゴッドリク(1065年~1170年)作の宗教歌である。
 (中略)
 ここで歌われている音楽は、1200年頃に作られた写本(London,British Library,MS Royal 5F.vii)からとられたものである
           ―――今谷和徳氏による解説

 と記されています。
 12~14世紀初頭にかけての、英語による歌曲(とはいえ、古イングランド語ですが)を集めたアルバムで、学問的厳密さと、生きた音楽の喜びとが一体となった見事な演奏が収録されています。
 残念ながら、現在このアルバムは日本では絶版となっていますが、輸入盤である『セクエンツィア・エディション(十枚組CD)』として入手する事が可能です。

 『セクエンツィア』とは本来、中世のグレゴリオ聖歌の曲種名のひとつで、ミサ曲(=トラクトゥス・詠唱)の後に続けて歌われるラテン語の聖歌です。和訳では「続唱」と呼ばれています。
 『セクエンツィア』は、キリスト教会において9世紀から15世紀にかけて流行し、大量に作られました。その数は5000曲を超えるほどだったそうです。しかしながら、あまりにも膨大な数となってしまったので、整理が追いつかず、逆に混乱をきたすようになってしまいました。そのため、16世紀半ばのトリエント公会議において、4曲を残すのみとし、それ以外の曲すべてが廃絶されてしまったのです。
 まさに、中世という時代を象徴する音楽様式といえるでしょう。

 その『セクエンツィア SEQUENTIA』をグループ名としたこのアンサンブルグループは、アメリカ人の古楽アーティストで音楽学者でもあるベンジャミン・バグビーとバーバラ・ソーントンを中心に、1977年、スイスのバーゼルで結成されました。

 ―――中世の宗教曲と世俗曲の接点を求めて、これまであまり光が当てられなかった部分を積極的に掘り起こそうとしてきたのである。そして、それらの作品の再現にあたっては、必ず写本の研究をまず行い、さらに、当時の文学、歴史などの関連分野を研究してから演奏に移っている
                 ―――今谷和徳氏による解説

 彼らはやがて本拠地をドイツのケルンに移し、長くこの地を中心に活動してきましたが、現在はパリを拠点に活躍されています。

 彼らの楽曲はすべて素晴らしいのですが、その中でも私がもっとも好きな曲が、この『聖なる乙女マリアよ/キリストと聖なるマリアが/神より愛されし聖ニコラは』です。
 最高の音楽家が紡ぎ出す、最高の中世音楽をご堪能ください。


             歌詞訳

  『聖なる乙女マリアよ
   聖なる乙女
   マリア、
   ナザレの人
   イエス・キリストの御母よ
   御身のゴドリックを
   受け入れ、守り、助けたまえ。
   受け入れられなば、御身とともに
   彼を神の王国へと導きたまえ。

   聖なるマリア、
   キリストの寝室、
   乙女の純潔、
   母らの花よ
   わが罪を消し、
   わが魂を支配し、
   わがまことの神とともに
   われを至福へと導きたまえ

  『キリストと聖なるマリアが』
   祭壇の右の天使 :
   主よ、あわれみたまえ。
   祭壇の左の天使 :
   キリストよ、あわれみたまえ。
   修道女 :
   キリストと聖なるマリアが
   かくわれを祭壇へと導きたまいぬ、
   わが素足にてわれが
   この地を歩まぬよう。

  『神より愛されし聖ニコラは』
   神より愛されし
   聖ニコラは
   われらのために美しき住居を
   寛大にも準備したり。
   御身の誕生、
   御身の死の功績によりて、
   聖ニコラよ、われらをそこに安全に導きたまえ。


『中世イギリスの歌 English Songs of the Middle Ages』
   1987年6月23日~25日
   ドイツ キルヒハイム フッガー城 糸杉の間にて録音

  ◎ バーバラ・ソーントン   歌
    (Barbara Thornton)
  ◎ ベンジャミン・バグビー  歌、ハープ、シンフォニア
    (Benjamin Bagby)
  ◎ マルグリート・ティンデマンス フィーデル
    (Margriet Tindemans)
 mit
  ◎ エドマンド・ブラウンレス 歌
    (Edmund Brownless)


 セクエンツィア・ホームページ
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